確定申告のため源泉徴収票の見方をあれこれ研究しています。
そしてふと気が付きました。
源泉徴収票に記載された「生命保険料の控除額」の金額が、わたしの計算とちがうんだけど・・・?
そこで今回は、源泉徴収票の中の「生命保険料の控除額」についてくわしく調べてみました。
その結果、テキストだらけの記事になってしまいました(;´Д`)
源泉徴収票の中身については、確定申告書の作成前に源泉徴収票の見方をかるくおさらいでくわしく説明しています。
もくじ
生命保険料控除ってなに?
1年間に支払った生命保険・介護医療保険・個人年金の保険料に応じた金額が所得から差し引かれる制度です。
生命保険料控除は、所得控除の対象になります。
所得とは、収入から給与所得控除(会社員の必要経費)を引いた金額です。
所得控除とは、所得から一定額を差し引いて、税の負担を軽くすることができる制度です。
※所得控除についてくわしくは、国税庁 所得金額から差し引かれる金額(所得控除)
給与所得控除と所得控除は別ものです(^-^;
似た専門用語があってまぎらわしいですね。。。
- 収入ー給与所得控除(会社員の必要経費)=所得
- 所得ー所得控除=課税所得
- 課税所得×税率=所得税
計算がたくさんあってややこしいですが、この所得控除がたくさんあるほど、節税できます!
所得控除のあるなしは、所得税のほかに住民税の計算にもかかわってくるので忘れずに申告したいです。
所得控除は生命保険料控除のほかに、社会保険料控除、地震保険料控除、配偶者控除、扶養控除などがあります。
生命保険料控除の種類
生命保険料控除は、新契約と旧契約とで扱い方がちがってきます。
- 新契約→平成24年(2012年)1月1日以降に契約した保険
- 旧契約→平成23年(2011年)12月31日以前に契約した保険
平成24年(2012年)1月1日以降の新契約では、新たに介護医療保険料控除が新設されました。
新契約【平成24年(2012年)1月1日以降に契約】 | 旧契約【平成23年(2011年)12月31日以前に契約】 |
生命保険 | 生命保険 |
介護医療保険 | - |
個人年金 | 個人年金 |
介護医療保険とは
- 平成24年1月1日以降に契約した医療保険、がん保険、介護保険などの民間の介護保険。○○生命とかで扱っている
- 公的介護保険ではカバーしきれない部分を補うための保険。介護一時金、介護年金など現金での支給
介護医療保険は、社会保険の「介護保険」制度とは別ものです。
社会保険の「介護保険」は、65歳以上の高齢者や、40歳~64歳の特定疾病(ガン、リュウマチなど)で介護が必要になった人を、社会全体で支える公的な制度です。現金での給付は行わず、訪問看護やリハビリなどのサービスを提供します。
生命保険料控除額の上限
新契約、旧契約それぞれ控除の最高額が決まっています。
〇新契約
- 生命保険料控除→4万円
- 介護医療保険料控除→4万円
- 個人年金保険料控除→4万円
- 最高合計12万円
〇旧契約
- 生命保険料控除→5万円
- 個人年金保険料控除→5万円
- 最高合計10万円
最高12万円
|
生命保険料控除の計算式
生命保険料控除の金額を求めるには、新契約、旧契約それぞれに計算式があります。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超~40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超~80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
(2)旧契約(平成23年12月31日以前に契約した保険契約)の控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超~50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超~100,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
新契約と旧契約の両方に加入している場合は、旧契約の支払保険料等の金額によって控除額の計算方法が変わります。
旧契約の年間支払保険料等の金額※ | 6万円超 | 6万円以下 |
控除額 | (2)旧契約の金額 | (1)新契約+(2)旧契約の合計金額 |
上限 | 5万円 | 4万円 |
※旧契約=一般生命保険・個人年金保険
各生命保険料控除の金額は、上記の(1)+(2)+(3)の合計金額です。
ただし、各控除のすべての合計額が12万円を超える場合は、12万円となります。
上の生命保険料控除額の上限でくわしく書きました。
参照 国税庁 生命保険料控除
生命保険料控除の合計額を出すに当たっては、新旧の契約に係る保険料について、算出された中で一番大きい金額の控除額を選ぶことができます。
例)
①一般の生命保険料控除額
- 新生命保険料に係る控除額→30,000円
- 旧生命保険料に係る控除額→50,000円
- 両方の運用を受ける場合の控除額→40,000円
一番大きい金額→2.旧生命保険料に係る控除額の50,000円
②介護医療保険料控除→25,000円
③個人年金保険料控除額
- 新個人年金保険料に係る控除額→30,000円
- 旧個人年金保険料に係る控除額→50,000円
- 両方の運用を受ける場合の控除額→40,000円
一番大きい金額→2.旧金神年金保険料に係る控除額の50,000円
合計金額
①50,000円+②25,000円+50,000円=125,000円
上限があるのでこの場合の生命保険料控除額は、120,000円
生命保険料の控除額と源泉徴収票のかんけい
毎年10月ごろに、加入している生命保険会社より「生命保険料控除証明書」が送られてくると思います。たいてい保険の契約内容のお知らせが一緒になっています。
その「生命保険料控除証明書」は、年末調整のときに必要になります。
年末調整では、「給与所得者の保険料控除申告書」用紙の生命保険料控除の各欄に、一般、介護医療、個人年金それぞれの「生命保険料控除証明書」に記載の保険料払込金額※を書き写します。
※保険料払込金額について
生命保険料控除の計算式のところでも書いた通り、控除額には上限があります。
新契約の保険の場合、年間の支払保険料等が80,000円を超えると控除額は一律40,000円です。
80,001円以上の契約がひとつでもあれば、他の契約の支払保険料を合算して記載する必要はありません。
旧契約の保険の場合は、年間の支払保険料等が100,000円を超えると、控除額は一律50,000円です。
100,001円以上の契約がひとつでもあれば、他の契約の支払保険料を合算して記載する必要はありません。
「給与所得者の保険料控除申告書」用紙に記載した控除額は、源泉徴収票に反映されます。
① | ② | ③ | ④ | ⑤ |
新生命保険料の金額 | 旧生命保険料の金額 | 介護医療保険の金額 | 新個人年金保険料の金額 | 旧個人年金保険料の金額 |
年末調整の「給与所得者の保険料控除申告書」用紙の生命保険料控除の欄に記入した申告額が、上記の①~⑤と、「生命保険料の控除額」の欄に反映されます。
源泉徴収票の控除額の計算が合わないと思ったら
ところでわが家は、生命保険は、新契約と旧契約の両方に加入しています。
ためしに源泉徴収票に記載の控除額を確認してみたところ、わたしが計算した控除額と、源泉徴収票の「生命保険料の控除額」とが合いません。
実例)源泉徴収票の「生命保険料の控除額」は4万円と記載されているけど、5万円じゃないの?
条件
- 一般の生命保険のみ加入、介護医療保険と個人年金は未加入のものとする。
- 新・旧の保険に加入。
- ①新生命保険料は40万円、②旧生命保険料は1万円。
計算の手順
- ①新生命保険料は40万円、②旧生命保険料は1万円
- 新生命保険料の控除額は、(1)により、80,000円超なので、一律4万円
- 旧生命保険料の控除額は、(2)により、支払保険料等の全額となるので、1万円
- 一般の生命保険料控除額は、新・旧を合わせた金額→4万円+1万円=5万円
だから、一般の生命保険料控除額は5万円でしょ!
いいえ、ちがいます。
新契約と旧契約の両方に加入している場合の計算方法がありましたよ。
ただしい計算は、こちら
- 新生命保険と旧生命保険の両方に加入しているので、「(3) 新契約と旧契約の双方に加入している場合の控除額」に該当する
- 旧契約の生命保険料控除の年間支払保険料等は、6万円以下
- 新生命保険料控除額は4万円、旧生命保険料控除額は1万円
- 控除額は、新・旧合わせて5万円だが、上限がある
- (3) 新契約と旧契約の双方に加入している場合の控除額の上限は最高4万円のため、生命保険料控除額は4万円となる。
よって、5万円ではなく、4万円。
源泉徴収票に記載された控除額でまちがいなかったです(^-^;
自分の計算では心配な時は、各生命保険会社で生命保険料控除の計算シュミレーションがあるので、利用してもいいですね(^^♪
まとめ
生命保険料控除とは、
- 生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合、一定の金額を所得税から控除できる制度
- 新契約と旧契約とで扱いがちがう
- 新契約、旧契約の両方に加入している場合の計算方法もある
- 控除には上限あり。新契約全部で12万円、旧契約全部で10万円、新旧合わせて12万円。
毎年のように変わる税制については、公開されている記事の日付けを確認して、一度は公式サイトに目を通しておこうと思いました。